たられば書店 (仮称) 開業日誌

大阪・守口市に「まちの本屋」(たられば書店[仮称])を開こうとする試み

すべからく、こと、山本大介と申します。
大阪府・守口市近辺で本屋を開業しようと思っています。(今のところ)屋号は「たられば書店」。
日頃忘れてしまいがち/あきらめてしまいがちなこと、「もし、…し『たら』/きっと、…す『れば』」を叶えられそうな場所をつくりたいと思っています。

普段は4才の男の子の父親であり、現役「主夫」です。

いま、どんな本屋が求められているのか? ぼくはどんな本屋がしたいのか?
書店業にはほぼ就いたことのない、ずぶの素人ですが、そんなぼくが考え、実行する記録です。
※2014年12月以降、ずいぶん更新停止していましたが、再開しました。(2016.2.25~)

にちじょうごともちらほら書いています。にちじょうと本(屋)は地続きだと信じているので。



コーヒーが好きなときに飲めるという生き方 ~「LVDB BOOKS」(大阪市東住吉区)へ~

■ 「生活発表会」に感化されて

 去る2/25、451日ぶりにこの「開業日誌」を再開させたとき、ぼくは、

すべては、2/4(木)に再訪問した「LVDB BOOKS」の店主・Kさんと話したことから、再スタートしたように思う。

とりあえず再始動(ほんとうはまだそこまで実感できていない)のお知らせ。これまでの整理。 - たられば書店 (仮称) 開業日誌

 と、書いた。ほんとうにそのとおりだ。
 LVDB BOOKS(エルヴイディービーブックス)を訪れたのは、もう1ヶ月ほど前になるけれど、その訪問と、そこでの店主のKさんとの会話がなかったら、この「開業日誌」の再開はもちろん、「たられば書店」開業に向けての今のぼくはなかった。
 そういうわけで、きょうは、2/4に(再)訪問したLVDB BOOKSのレポートと感想を書きたい。

* *

 ぼくが、LVDB BOOKSのことを知ったのは、1/14(木)のことだ。
 妻が通勤帰りにもらってきてくれた、関西地方の私鉄・地下鉄各社の団体「スルッとKANSAI」が発行している隔月刊のフリーペーパー『Asobon!(アソボン)』(2016年1・2月号 vol.23→PDF)が、<いまどき、書店がおもしろい>と題した書店特集を掲載していた。「きっと、いつもの有名どころが載ってるんだろうな」と思って手にとって見たところ、わりと「渋い」店選びがしてあった。その店の選択をしたライターや、その店の掲載をOKした編集部の勇気には敬服する。

 そこで、もっとも気になったのが、大阪・駒川中野にある、銭湯を改装して開店した、と書かれていた「LVDB BOOKS」だった。

 それから2週間。
 なにかお尻の下の方でムズムズするものを感じながらの日々だった。
 LVDB BOOKSは、木~日の12:00~20:00が営業日であり、そのうち、主夫であるぼくが、誰の許しも得ずにじぶんの裁量だけで動けるのは「木・金の12:00~16:00ごろ」のみ、週4時間である。
 そして、意を決して、1/28(木)に、初めて訪れる駒川中野まで行ってみた。…しかし、残念ながら「臨時休業」の貼り紙。すごく残念だった。
 でも、せっかく見知らぬ町、駒川中野にまで来たのだから、喫茶店でお茶ぐらい飲んで帰ろう、と思って、事前に調べておいたLVDB BOOKSから徒歩数分の「HONU COFFEE」を訪れるも、こちらも営業時間が終了していて、「やっぱり、古本屋開業なんて、ぼくは諦めた方がいいんやな、これは」、そう思った。それから、お茶を飲むことも諦めて帰ろうとすると、今川沿いにぼく好みの「喫茶マカデミア」発見し、居心地がとても良かったので少し気を取り直せたものの、沈んだ気持ちで帰宅したことをよく覚えている。

 そして、それから1週間が経った2/4(木)。
 その日は朝から、息子の保育所で「生活発表会」があった。
 「生活発表会」というのは、毎年年度末にある、その年の保育所行事の総決算というか、「子どもたちの1年の成長を見てください」的催しで、息子のクラスは、馬場のぼる11ぴきのねこふくろのなか』を原題にした「14匹のねこと6匹のウヒアハ」の劇(息子は「猫Aグループ」)、「ドラえもん」の主題歌「夢をかなえてドラえもん」の合唱、そして「きらきら星」の合奏(息子は「鈴」を担当)を発表。
 朝から妻とふたりで観に行ったのだが、そこで、いつもはそんなに「キンチョーしい」でもない息子が、劇が始まる直前に何かハプニングが起きたらしく、なぜかひとりだけ舞台への登場も遅れ、後は、ずっと名札を手でイジイジしており、台詞もままならない様子だった。その後の合唱と合奏は、なんとか持ち直したものの、いつもの彼らしくなかった。ただ、ぼくは、それも含めて、息子の「成長の証」だと思えた。他の子どもたちの1年の成長とともに、見ていてハラハラ、ドキドキ、そして少し涙が出てくるような、そんな時間だった。
 その後、昼から出勤する妻を会社まで車で送って行き、そのまま帰宅しようと思ったが、息子の「がんばり」に感化されたぼくは、ふと、「あ、LVDB BOOKSに行ってみよう」と思った。

11ぴきのねこふくろのなか

11ぴきのねこふくろのなか

夢をかなえてドラえもん

夢をかなえてドラえもん

■ 働くのが嫌だったから

 1週間ぶりの駒川中野の町。
 お店の近くのコインパーキングに車を停めたぼくは「どうか、開店していますように」とだけ願って、LVDB BOOKSまで歩いた。ありがたいことに、お店は営業中だった。

 久しぶりに訪れる(古)本屋さんだった。
 ずっと、本屋とか書店の情報をシャットアウトしていたぼくが、去年の12月、妻と息子と3人で兵庫・たつの市に行ったとき、龍野城近くの「ねぶたや書店」(龍野町本町56)という古本屋を見つけ入ってみた、それ以来だったと思う。じぶんで調べて、じぶんで行きたいと思い、店に入ったのは、覚えていない、ほんとうに久しぶりのことだった。

 店内に入り、棚を見せてもらいながら、息子と訪れるイオン内の未来屋書店や、京阪百貨店(守口店)内の旭屋書店とは違う、久しぶりの選書された本たちに圧倒され、目がくらんだ。
 店主のKさんは、ずっとレジ棚で、何かを切る作業をされていた。どう話しかけようか、ぼくはもう知らない人への話しかけ方も忘れていたが、なんとか「実は、先日来たとき、臨時休業だったんですよ」と告げると、Kさんからは、お詫びに続いて「滅多に休むことなんてないんですが、あの日は、ちょうど子どもが生まれて…」と、ものすごく意外で、ものすごくおめでたい理由が聞けたのが、まずうれしかった。

 その後、Kさんに、おいしいコーヒーを淹れてもらいながら、ゆっくりとお話を聴くことができた。

 Kさんが、お店を開業された理由は、「(雇われサラリーマンとして)働くのが嫌だったから」というものだった。
 「本好きが高じて…」とか、よく耳にするもっともらしい「古本屋開業譚」よりも、そのひと言で、ぼくはKさんという個人に興味が湧いた。
 お店をオープンされる前、Kさんがどんな仕事に就かれていたのかは聞きそびれたが、コーヒーを淹れていただいたときに、「コーヒーが、こうやって好きなときに飲めるんですよっ! コー、ヒー、がっ!」と熱弁されていたのが今もまだ耳に残っている。

■ 駒川中野という町

 1985年生まれのKさんは、大阪の北摂地域で生まれ育ち、お店のある大阪市南部には縁もゆかりもなかったようだ。
 北摂の新興住宅地の空気に嫌気がさしていたKさんは「今更、大阪の中心街でお店を出しても、コストがかかるばかりで特色が出せない」と考え、それよりも「商店街のある街、個人商店が息づいている土地」を探し、今も活気づいている「駒川商店街」があり、銭湯に併設されていた「管理人室」のような今の物件(銭湯自体は現在では取り壊されてる)を見つけ、この場所を選んだ。個人住居も近くにあるようだけれど、今では「倉庫でもある店の2階で寝泊まりすることも多い」と聞いた。
 LVDB BOOKSのお店は、商店街からは駅を挟んで逆に位置しており、地下鉄(谷町線)駒川中野駅から近い(徒歩5分ぐらい)というものの、周辺はすでに住宅街といった様相。ただ、この地域、Kさんの言うとおり、まさに「個人商店が息づいている土地」といった感じで、住宅街のなかにポツリポツリと、いろんなお店が点在しており、そのお店それぞれが決して寂れているわけではなく、不思議な磁場を感じた。
 Kさんの話では、この周辺は、過去には大型スーパーが撤退、最近では、駅前のマクドナルドが撤退したようで、でも、逆に昔ながらの八百屋や魚屋といった個人商店が今も変わらず繁盛している、とのこと。
 やはり、Kさん、LVDB BOOKSも、「まち」、そして「そこに住む人々」とつながることを考えている。

 Kさんは、お店を開く前、LVDB BOOKSから車で10分ほどのところにある古書店「居留守文庫」に、「一箱スペース」を借りて古書の委託販売をしていたらしく、そのなかで「手応え」のようなものを感じて、2015年3月、「LVDB BOOKS」を開業された。
 本棚や、リフォームもほぼ手作業で行い、開業にあたって「組合*1」には入らず、古物商免許だけを取得して、仕入はもっぱら客売りと、あと、これはきちんと聞けなかったが、「不動産屋や建築関係の人と仲良くなっていて、そのルートが大きな仕入先だ」ということだった(引越やリフォーム・売却の情報を得て、個人宅まで買い付けに行くということだろうか)。

 「マンガからは手を引こうと思っています」と、Kさん。
 狭い店内でマンガのシリーズ物はかさばるし、「値段でも品揃えでも新古書店ブックオフ)などには叶わないから」と話されていた。
 お店の家賃など、詳しくは聞けなかったけれど、開業して1年、「金持ちになろうと思わなければ、じゅうぶんに生活していける」経営状態ではあるそうだ。

 ちなみに、駒川中野駅周辺には、新刊書店の店舗は、ぼくが歩いた限りでは見当たらなかった。
 古書店も少し離れたところに1軒、あとは離れた大通り沿いに大型古書店が数軒、あとはTSUTAYA。ただ、隣駅の近鉄針中野駅、駒川商店街内には「アセンス針中野店」という、心斎橋やアメリカ村にある本店が洋書やデザイン・写真関係の本も多く取り扱っている、大阪ではわりと一目置かれている書店の支店がある。

 Kさんは「店売りも重要だけれど、外売りも案外売上には貢献してますね」と言われており、大阪ではやっと最近少しずつ増えてきた「一箱古本市」や、その他のイベントにも出店されているようだった。

■ 覚えにくい店名を付けようと思った

 店名のLVDB BOOKSの由来については、アキ・カウリスマキ監督の映画「ラヴィ・ド・ボエーム La Vie de bohème 」(1992年)からきている。
 Kさん曰く「最近、とにかくこなれた客受けの良い店名が多いでしょ、だからとにかく覚えにくい名前を付けようと思っただけで、深い意味はないんです。LVDBっていう名前を覚えているかどうかで、その人にとって、うちの店がどれくらいの位置にあるかがわかるでしょ」と。
 ただ、店の棚をみると、やはり文学、人文系の本にも増して、映画・写真関係の書籍・雑誌が多く、映画はKさんの核にあると思えた。

 また、店内には、小さな出版社や海外の出版社の新刊、雑貨なども販売されていて、小さな店舗だけれど、充分見応えのある棚が、そこにはあった。

 その日、ぼくが購入したのは、

藤子不二雄ウメ星デンカ』2・3巻(昭和52年・小学館てんとう虫コミックス
・松竹いね子 さく・堀川真 え『じかきむしのぶん』(こどものとも年中向き 1992年6月号)
橋本治『増補 浮上せよと活字は言う (平凡社ライブラリー)』(2002年・平凡社ライブラリー
渡辺京二津田塾大学三砂ちづるゼミ『女子学生、渡辺京二に会いに行く』(2011年・亜紀書房

 値段も決して高くはなかった。

じかきむしの ぶん (こどものとも絵本)

じかきむしの ぶん (こどものとも絵本)

浮上せよと活字は言う (平凡社ライブラリー)

浮上せよと活字は言う (平凡社ライブラリー)

女子学生、渡辺京二に会いに行く

女子学生、渡辺京二に会いに行く


 お店のレポートは以上。

■ 雇われずに生きること

 LVDB BOOKSの経営とか扱っている本についてなどの話よりも、むしろ、Kさんの開業理由が「(雇われサラリーマンとして)働くのが嫌だったから」というセンテンスだったことがぼくの頭にこびりついていて、Kさんとは、そのほとんどの時間を、「どうすれば雇われずに生きられるか」、「雇われずに生きていると何が楽で、何がしんどいか」というような話に終始していたような覚えがある。
 あと、Kさんに、1週間前、お子さんが生まれたということで、子どもが生まれる直前での古本屋開業に踏み切ったときの夫婦関係とか、ぼく自身と上林さんと重ねてしまう部分が多くあり、ある意味で、これまで聞いたどんな開業経緯よりも、とても参考になった。

 Kさんとは、もちろん初対面だったが、本のこと以上に、なんだかその「生き方」というか、「斜に構え方」が独特で、今度はなんとかアルコールとともにゆっくりお話ししてみると、まだまだいろんな話が聞けそうだった。
 ぼくが「いろいろとあって、もう諦めたつもりで、今はもうとりあえず古本屋の開業を目指してますけど、できるなら、まだ新刊書店をやりたい気持ちもあるんですよ」と言うと、「それは良いですね。京都では誠光社など、直取引の書店が出てきていますが、大阪にはまだないですし、大阪だと、新しいタイプの古書店は、もう飽和状態に近いんじゃないんでしょうか、おもしろそうです」と、Kさんは言ってくれた。

 その後、Kさんは「お店を出したいという相談なら、居留守文庫さんに相談すれば、ぜったいに大丈夫です」と教えてくれたり、「一色文庫」についてもオススメしてくれた。
 後に、Kさんは、いただいたメールのなかで、ぼくに次のように言ってくれた。

居留守文庫は関西で今までにない古本屋の形を作ったと思います。
古本屋という形態に関しては居留守文庫の岸さんが一番詳しいと思います。

一色文庫は大阪で一番本好きから支持されている本屋です。
大阪から古本屋がすべて無くなるとして、最後に残るのは一色文庫だと思います。

居留守文庫も一色文庫も、古本屋としてだけでなく、
人として本当に魅力的です。
機会があれば、ぜひ行ってみてください。

 そういうわけで、ぼくの(古)本屋めぐりは、スタートするわけだけれど、その後訪れた「居留守文庫」や「一色文庫」、その他のお店については、また次回以降に書くことにしたい。
 ともかく、今のぼくがあるのは、2/4のLVDB BOOKS、LVDB BOOKS店主のKさんのおかげである。Kさん、ほんとうにありがとうございました。

lvdbbooks.tumblr.com


※フリーペーパー『Asobon!(アソボン)』(2016年1・2月号 vol.23)の「いまどき、書店がおもしろい」の記事は↓。
 掲載書店は↓(掲載順)

・誠光社(京都) http://www.seikosha-books.com/
・1003(せんさん)(兵庫) http://1003books.tumblr.com/
・LVDB BOOKS(大阪) http://lvdbbooks.tumblr.com/
・blackbird books(大阪) http://blackbirdbooks.jp/
・エメラルドブックス(兵庫) http://emeraldbooks.blog.fc2.com
・只本屋(京都) http://tadahon-ya.com/
・スタンダードブックストア心斎橋(大阪) http://www.standardbookstore.com/
・とほん(奈良) http://www.to-hon.com/
・ミシマ社の本屋さん(京都) http://www.mishimasha.com/
・ホホホ座(京都) http://hohohoza.com/
・London Books(京都) http://londonbooks.jp/
・居留守文庫(大阪) http://www.irusubunko.com/
・FOLK old book store & restaurant(大阪) http://www.folkbookstore.com/

特集「いまどき、書店がおもしろい」

Posted by たられば書店-開業準備中 on 2016年3月2日

*1:都道府県にある古書籍商業協同組合。大阪では、大阪府古書籍商業協同組合 http://www.osaka-kosho.net/

copyright © たられば書店 Tararebabooks.