靴を脱ぐタイプ
朝、7時すぎ起床。
妻と息子を見送り、9時すぎ車でK工務店へ。「たられば書店」のリノベーションの打ち合わせ。
10時前、K工務店着。約束していた設計士のTさんは、他のお客さんと予約をバッティングしており(! どこかTさんはいつも「ヌケて」いるのだが、ぼくにはどうも憎めない)、社長のKさんとふたりで、昨日メールで送っておいた「古民家」の写真を見ながら、お話。最初は応接室で話していたのだが、イメージが湧くようにと、社内の「まちのえんがわ」に移動し、さらに構想をお互いに話す。
・「まちになじむカッコよさ」
・「えんがわ」
・「土間はそのままに」
・「まちの外の人にとっては入口の、まちの中の人にとっては出口のようなお店」
・「休憩所としての要素」
Kさんとお話したなかで、ぼくはこんなふうにメモを取っている。
「おしゃれ美術館」のようなお店にはしたくないことから、本棚など、カッコよく決めるところは、カッコよくつくってもらうが、今の古民家のままの古い、崩れた要素も残した方がいい、など、的確なアドヴァイスも。そして、K工務店の「まちとつながる」ことのコンセプトである「縁側」、そんな「えんがわ」のある店にしてもおもしろい、など。
Kさんと、社内の「まちのえんがわ」に移動して話していたとき、ぼくは、靴を脱いで土間に上がって(木村さんは床に置いた椅子に座って並んで)お話していたのだけど、Kさんから言われたのは、「ここで打ち合わせするとき、靴を脱いで土間に上がった人は初めてだ」ということ。慣れ慣れしいようで、とても恐縮したけど、「山本さんは『靴を脱ぐタイプ』でしょ、お店もそんなふうに『靴を脱いでもらう』本屋にしたら」と言われ、驚いた。たしかに、今の古民家の良さを残すのなら2Fはもちろんんだけど、1Fの畳の部屋も残して、キッチン側を本棚にして(10mぐらいの本棚になる!)、そこは靴で移動してもらえるよう床にする。そんな構想が頭のなかで見えてくる。そう、ぼくはまさに「靴を脱ぐタイプ」だ。喫茶店でも、車のなかでも、すぐに靴の窮屈さから解放されたくなる。
「でも、靴を脱いで本を読まなければいけない本屋なんてまさに“敷居が高い”のではないですか?」とぼくが問うと、「いやいや、子どもたちや、お母さん連れのお客さんに来てもらいたいのなら、靴を脱いで読める本屋なんて、とってもいいと思いますよ」と木村さん。それもそうかもしれない。カフェ的な要素も薦められた。
昨日、レジュメ(リノベーションにかけられる金額や、現時点での希望コンセプト、どんな本屋にしたいか、などを書いておいた)と、それから、もちろん「古民家」内の写真を送っておいたおかげで、最初の打ち合わせにしては、実のある話ができたのではないかと思う。木村さんの話では、物件を実際に見に行って「寸法取り」をしてから約1ヶ月半~2ヶ月で、いちばん最初の設計図が出来上がるスケジュールになるという。
結局、1時間半ぐらい話して、設計士のTさんの予定と社長の予定を合わせて、「寸法取り」の日程をまた連絡してもらうように頼んで、店を後に。
■
昼は、イオンモール大日のコメダ珈琲に。昼食、というわけでもないのだが、シロノワールをまた食べてしまう。ホットコーヒーとともに。
コーヒーを飲みながら、伊達雅彦『傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)』読了。とくに、近隣の駅前に大型書店が出来てから、著者が店長を務める書店が閉店に追い込まれるまでの経緯に入ってからは、一気読みしてしまった。まるで「たられば書店」の未来を見ているような…。『傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)』は、文体がとても良かったと思う。そして、文末の1文のそこはかとなさ。「友人の残匂を探そうとして、私は棚の谷間を無意味に歩いた」とか「怒りの後には寂しさだけが少し残っていた」(著者は、よく怒る。とくに「万引き」では)とか、「私はひとり、事務所の机にうつ伏せる」とか。
「将来、本屋で働きたい」という甥に対して、それを止めさせようとするエピソードは、本屋を開こうとしているぼくとしては、まるで甥になった気分で読んでいた。
「どうして叔父さんは本屋になったの? その言いっぷりだと本屋が嫌いみたいに聞こえる。そんなに反対するならなぜ、まだ本屋のままなのさ?」
再び私は絶句する。
とても難しい質問だった。
いや、答えそのものはとても簡単で、数学の答えのようにひとつしかない。だが、それを今、甥に向かって言うのはとても恥ずかしかった。このいピンチを切り抜けるべく、めまぐるしく頭を回転させたが、やがてあきらめることにした。
「そりゃ、お前…」長い沈黙の後、私は甥の視線を避け、あらぬ方向に顔を向けて答える。
「…本が大好きだからだよ」
甥が勝ち誇ったように、ニヤッと笑った。
この後、文章は、「本当に本が好きなら、本屋になどなるべきではない、という、私の反省を含めた思いを甥に伝えるには、まだまだ時間がかかりそうだった」と続く。
そう、ぼくもずっとそう思ってきた。「本当に本が好きなら、本屋になどなるべきではない」、「本屋」のところにに入る単語は、他にも、「編集者」「古本屋」など、本に関わる仕事を表す単語なら、なんだっていい。本をしごとにすると、本が好きでいられなくなるように思っていた。でも、今のぼくは、逆に「本しかない」のだと思っている。
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14:30、K病院通院。なんと、診察室に呼ばれたのは、15:30すぎ。予約していたのに、1時間近く待たされた。
その間、宮部みゆき『ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻 (新潮文庫)』を読み進める。もちろん、すでにⅠ部(事件 上・下巻)は読んでいる。
中学生、ひとりひとりの心理描写が、とても活き活きとしているのがいい。とくに「ずるさ」など、負の面をていねいに、探るよう、深く書いているところ。
16時すぎ、診察終了。いったん、家に帰って夕食をつくり、保育所へ息子のお迎え。陽が落ちるのがはやくなった。暗くなった公園で、お菓子を食べさせる。19時、息子を連れて、市役所の組合事務局の会議室、守保連の事務局会議。仕事帰りの妻が急いで息子を迎えに来てくれる。
明日は、朝から、月例の保護者役員・クラス会なのだが、あいにくWさんも、Kさんも、都合が悪く出席できないとのことで、今度(19日)の「保育所まつり」については、ぼくが進めていかなければならない。Kさんが、明日のレジュメを含め、いろんなものをたくさん準備してくれてきたおかげで、それほど大変ではなさそうだが、気が重い。気が重いが、7月、8月、と、ぼくが「ズンドコ」生活を送って、守保連や保護者会の活動を休ませてもらっていたときには、WさんやKさんにはほんとうに迷惑をかけたため、「保育所まつり」はなんとかやり遂げなければならない(一応、実行委員長でもあるし)。
21時すぎ、帰宅。妻と息子は入浴中。
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