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たられば書店 (仮称) 開業日誌

大阪・守口市に「まちの本屋」(たられば書店[仮称])を開こうとする試み

すべからく、こと、山本大介と申します。
大阪府・守口市近辺で本屋を開業しようと思っています。(今のところ)屋号は「たられば書店」。
日頃忘れてしまいがち/あきらめてしまいがちなこと、「もし、…し『たら』/きっと、…す『れば』」を叶えられそうな場所をつくりたいと思っています。

普段は4才の男の子の父親であり、現役「主夫」です。

いま、どんな本屋が求められているのか? ぼくはどんな本屋がしたいのか?
書店業にはほぼ就いたことのない、ずぶの素人ですが、そんなぼくが考え、実行する記録です。
※2014年12月以降、ずいぶん更新停止していましたが、再開しました。(2016.2.25~)

にちじょうごともちらほら書いています。にちじょうと本(屋)は地続きだと信じているので。



棚をチューニングするということ

 17日(金)の「町本会」(「町には本屋さんが必要です会議」Vol.16@大阪)@隆祥館書店でのこと。そろそろ忘れそうなので、覚えている限りのレポート。

 その日の夜は、息子を妻に任せて、少し前に家を出て、久しぶりに上本町に行った。
 上本町は、ぼくがサラリーマンをしていた頃、唯一の立ち寄る本屋があった街で、なかでも「ルーブル書店」(現在の店名は「ルーブル1980」)に久しぶりに行ってみたかった。近鉄百貨店にあった書店は、いつの間にかジュンク堂書店(上本町店)になっており驚きだったが、「ルーブル1980」は、いくぶんスッキリした店に様相を変えて、しっかりとし佇まいを残しており、安心した。
 その後、隣の喫茶店「珈琲館 於巣路」で1時間ほど、島田潤一郎『あしたから出版社 (就職しないで生きるには21)』を読み直した。

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 上本町から、谷町六丁目の隆祥館書店までは歩いて向かった。ちょうど19時前に隆祥館書店近くのコンビニで一服していると、colocalで「町の本屋制作ノート」を連載されている萱原(正嗣)さんからメールをいただいた。
 以前、その連載のコメント欄に「大阪の町本会に行きますか?」とコメントさせていただいたことがあり、萱原さんも来られていたようで、それで連絡をくれたのだ。うれしかった。

 19時すぎ、会場着。
 店先にはもう「満員御礼」の札が垂れ下がっており、盛況さが伺えた。会場に入ると、すぐに、前から2列目に座っている、とりさんを見つけ、声をかけ隣に座る。開演まで、お互いの近況報告など。
 19:30スタート。
 まずは、夏葉社・島田潤一郎さん、続けて、隆祥館書店の二村知子さんのあいさつ。そして、森口俊則さん(ハイパーブックスゴウダ)、長谷川稔さん(長谷川書店)、久野敦史さん(元パルナ書房)が登壇。
 島田さんの、「最近は、本の情報をツイッターで知ることがほとんどであり、本の発売日やその情報は、今やネットやAmazonが先で、本屋さんで知るのはいちばん最後」というエピソードで談義が始まる。
 今回の話のなかで、もっとも印象的だったのは、とにかく久野さんの「本屋の現状」のお話だった。具体的な数字をもとに、町の本屋がどれほどきびしい状態であるかを紹介されていて、今から本屋をはじめようとしているぼくにとっては、凹むような話ばかり。「町の本屋は、棚づくりや個性化は当然だけれど、結局のところ、雑誌・コミック・新刊ベストセラーだけ置いておけばいい」と、半ば自嘲気味にいう久野さんのことばは、重く胸にのしかかった。
 ただ、久野さんが「今、本屋さんをやりたい人はたくさんいるが、みんな古書店を始めてしまう」というトピックのなかで、そこには、取次(の保証金)問題などいろいろあるが、そういう新しい本屋をどう成り立たせるかよりも、まず「今ある本屋さんをどう存続させるか」が問題で、経営が立ちゆかず消えてゆく本屋もたくさんあるが、今、本屋が直面している問題は「後継者問題」であるとの指摘や、存続している本屋がどう成り立っているか、「その『スキーム』を確立させないといけない」とも仰っていて、その通りだとも思った。
 さらに、「人口減少社会のなか、必ず大型チェーン店は(売上を維持できず)撤退せざるをえなくなる、そのときに町の本屋がないと、その地域は読書文化のゴーストタウンになってしまう」とも指摘されていたこともとても印象的だった。
 森口さんの勤める「ハイパーブックスゴウダ」は、典型的な郊外型大型書店で、売上は上がっているとのお話も、この時代で大いに驚かされた。森口さんは「お客さんが求める本を並べているだけ」と仰っていたが、その口ぶりには、どこか自信のようなものもあって、棚づくりを懸命にされていることが伺えた。けれど、足りないのは「お客さんとのコミュニケーション」と自覚されている面もあった。
 一方、「お客さんとのコミュニケーション」を徹底的にやっており「片思いに溢れているお店」(島田さん談)とされる長谷川書店の稔さん(あえて、長谷川さんではなく、こう呼ばせてください)は「うちは競合店がないほど小さな町です。ただ、うちの店が『棚づくりがいい』というのは、少し否定的です。それよりも前に『人』、『町の人』にとって、その『場所』によって求められている本は違うので、ぼくはそれに合わせてお店に並べる本を『チューニング』しているだけです」とお話されていて、その「チューニング」という、本の棚づくりが、聞き取りにくいラジオの周波数を合わせるような細かい作業であるとの例えがとてもわかりやすかったし、大変だろうな、とも思えた。
 けれども、長谷川書店の売上も、やはりきびしいようで、「鼻先が出る」程度であり、その「鼻が沈まないように」店を運営しているとのこと。その例えもとても素晴らしかった。

 後半、久野さんは「リアル書店は、店主・店員とのコミュニケーションで成り立つ以外に道はないのではないか。Amazonを見れば、棚はコピーできるが、店主・店員とのコミュニケーションはコピーできない」と発言され、それまで辛辣な発言をされていた久野さんの結論も、やはり、その部分にしか(町の本屋の)活路はないのか、と、少々残念に思えていたのだけど(久野さんなら、もっとテクニカル的な活路を見出されているのではないか、という期待があった)、そこでは、JR伊丹駅駅前の「ブックランドフレンズ」のカワタ店長の例を紹介された。
 「ブックランドフレンズ」も、当初は、往来堂書店方式(文脈棚)で売り上げが上がっていたが、福知山脱線事故の後、復旧後も2割しかお客さんが戻ってこなかったことで、「マニアックな棚づくりで売れていたわけではない」と気づいたカワタ店長は、お客さんと「コミュニケーションをとろう」とし、そうして「お客さんとつながると、お客さんがその店以外では買えなくなった」ことを実感されているのだという。作家・喜多川泰さんの交流も、成功例になったらしい。
 コミュニケーション、コミュニティの話では、長谷川書店の稔さんは「お客さんと対面していると、小さな町でも面白い人はたくさいる」と仰り、そのなかには、もちろん本が好きな人がいるのだが、「場所をつくるのが好きな人」もいて、そこからどんどん新しい人脈が広がっていき、町興しではなく、「町残し」の人と知り合うようになったのだという。
 「本が関わっているところには、いろんな人が集まってくる」、「好きな食べ物を知ってもその人となりはわからないが、その人が好きな本を知ると、その人がなんとなくわかることが多い」とこれまたおもしろい話をしてくれた。
 その後、島田さんは、書店でコミュニケーションを図ることが重要と言われる、その一方で「今の人たちは、ある画一化された本屋に慣れており、、セレクトショップ(コミュニケーションを図ろうとしてくる店)が面倒でこわくなる(大型書店だと、ほっといてくれる)」面も、確実に出てきていると指摘されていて、それも、ほんとうにそうだとぼくは思った。
 ぼくが、いわゆるセレクトショップが苦手なのは、棚から醸し出されれる「どうだ、俺、スゴイだろ!」という店(店主・店員)からの自己アピールで、それは、なんというか、誰か知らない人の本棚を覗くときのような気恥ずかしさとも似ているし、見たくもない誰か知らない人のマスターベーションを見ているようでもあるからだ。
 以上が、「町本会」(「町には本屋さんが必要です会議」Vol.16@大阪)@隆祥館書店でのこと。一時間半の時間が、とても短く思える時間だった。郊外型書店に勤めている森口さんの話を「もっと聞いてみたかった」というのが、何より心残りだったけれど、時間の配分上、なかなか難しかったかもしれない。

 二次会は、谷町六丁目駅地下の中華料理店へ。
 ぼくは、最初、とりさん、森口さん、紀伊國屋書店(グランフロント大阪店)・Oさん、ミシマ社・Tさん、スタンダードブックストア(あべの店)・Kさんのテーブルについて、先日、スタンダードブックストアの面接に行ったときの話(結果・不採用)を恨みがましくしたり(!)、きょうの会議の印象をみなさんでお話したり。その後、稔さんのテーブルに行き、NHK報道部のカレー好きのディレクター・Aさんや、紀伊國屋書店・Tさんとお話ししたり。
 それから、三次会は、梅田の居酒屋へ。
 島田さん、空犬さん、萱原さん、森口さん、紀伊國屋書店・Oさん、稔さん、140BのNさん、ぼく、の8人で。
 三次会で話したことは、ここでは書けないこともあるけれど、三次会まであってのこの「町本会」だとぼくは思った。何より、みんな本が、本屋さんが好きなのだ、ということは、とてもわかって、なんだか勇気が出た。
 この「町本会」と、B&Bの内沼晋太郎さんのいう「これからの本屋」との違いが、もっと話ができると良かったかな。結局は、同じ方向を向いているし、その差異と同意できる点を突き詰めることが、町の本屋さんを考えることにとって、とても有意義だと、ぼくは思うのだけれど。

 今回の「町本会」では、その本が、本屋が好きなのだ、ということは、前提としてあるのだから、「そこから先」の話が聞けるともっと良かったのではないか、そして、何かもう少し具体的なテーマをもっても良かったのではないか、どんな些細なことでもいい、現状はもういいから(聞いていて涙が出てきそうになるので)、書店でのコミュニケーションのあり方などに絞っても良かったのではないか、そんなふうにも思った。
 第1回から第16回までの「町本会」がまとめられた『本屋会議』という本が、12月の「町本会」ファイナル東京堂書店で先行発売されるらしい。ぜひはやく手にとって読んでみたい。
 ぼく個人としても「町には本屋さんが必要です」。それは、ぼくが開業できるかできないかに関わらず。

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